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stoop studio

Presence

Presence
福田周平の制作は、自然・人間・素材の交わりから生じる現象そのものに焦点を当てています。気温や湿度、空気、光といった自然条件と、作家の意図、素材の特性が交錯する状況自体が、作品の「場」として立ち上がります。そこでは素材の固有性が引き出され、作品は完成された物質的形態としてではなく、時間の経過とともに変化し続けるプロセスとして現れます。

主要な素材である銀箔は、温度や湿度、空気中の硫黄などの環境条件に反応し、不可逆的な変色を起こす素材です。古くから劣化として忌避されてきたこの性質に対し、福田は制御や固定を試みるのではなく、素材が自律的に示す物質性と、その変容の痕跡を受け入れています。環境との関わりのなかで銀箔が獲得する時間性——ゆっくりと色調を深め、やがて崩壊へと向かう過程——は、人間の生の時間と重なり合い、不可視の自然現象を可視化します。福田にとって制作とは、自然に介入する行為ではなく、自然と素材が生成し変容していくプロセスをともに経験し、観察し、記録することにほかなりません。人の手が加えられた瞬間から進行する不可逆的な変化そのものが作品の本質となり、鑑賞者に時間の流れや環境との関係、そして物質の生のあり方を身体的に喚起します。

本展「 Presence(佇まい)」は、こうした福田周平の実践を、特定の場所と空間条件のもとで立ち上げる試みです。会場となる stoop は、ヴィンテージの家具や生活の痕跡を内包した空間であり、展示空間そのものが固有の時間性と物質的な密度を備えています。ここで作品は、空間から切り離された展示物としてではなく、光や空気、周囲の物質、人の気配と関係を結びながら存在します。銀箔は空間の一部として環境に応答し、作品は場所の記憶と現在進行する時間が交差する場として経験されます。

また、今回の展示では、新作となる彫刻作品を発表します。平面作品において展開されてきた素材の変容のプロセスは、彫刻という形式を通して空間へと引き出され、重力や奥行き、鑑賞者の身体的な移動と結びつきながら立ち現れます。ここでの彫刻作品は、完成された形態を提示するものではなく、周囲の環境との関係のなかで生成し続ける構造体として位置づけられます。生活の痕跡を内包する stoop という空間において、本作は、作品・場所・鑑賞者の関係をより直接的に体感させるものとなります。

展覧会全体の主題である「佇む」という状態は、動きの停止や形態の固定を意味するものではありません。それは、時間や環境を引き受けながら静かに在り続ける態度そのものです。本展は、作品を固定された対象として提示するのではなく、場所と時間に応答し続ける生成的なプロセスとして開くことで、福田周平の実践を新たな文脈において提示し、私たちの知覚と芸術のあり方をあらためて問い直す場となることでしょう。
プロジェクト名 Presence
年月 2026年2月
所在地 東京都江東区
アーティスト 福田 周平
撮影 遠藤 拓人(stoop)